米国式精密根管治療
米国式精密根管治療とは? 「before selecting implant」
「米国式根管治療」とは主にアメリカの根管治療専門医が行う術式を用いた治療方法です。下図のように歯の神経が入っている根管は非常に複雑に形態をしています。これまでの根管治療(歯内療法)は歯科医師の「勘」や「経験」によって治療が行われていました。しかしこのように複雑な形をした根管を治療するには、より精度の高い診断装置、拡大装置、治療機器、殺菌性のある根管洗浄・充填材料が必要です。「米国式根管治療」では世界中で認められているエビデンスに基づいた治療法を最先端の機材を用いて行います。
治療内容は、精度の高い一般的な根管治療から保険診療では行うことのできない難症例(破折ファイル除去、パーフォレーションリペア、レッジ除去、バイタルパルプセラピーなど)まで及びます。米国式根管治療を行っても歯の形状などの理由から治療効果が乏しい場合は、「歯科用CBCTと歯科用マイクロスコープを用いたマイクロサージェリー」もしくは「意図的再植」を行います。
私たちは、抜歯を望む人はいないと思っています。ですからこれ以上できないほどの技術を投入することにより「1本の歯にこだわり、1本の歯を最大限保存する」、これが米国式根管治療の神髄です。
※ すでに虫歯が深く歯冠修復が困難な歯、垂直性の歯牙破折、重度の歯周病などは残念ですが、米国式根管治療の対象とはなりません。
CTを用いた精密検査の有用性
例えば骨の密度や厚さの厚い下顎の奥歯などをレントゲンと撮影すると、病変だけではなく骨も映ってしまい、はっきりと病変が確認できないことがあります。歯科用CBCTでは病変の位置だけ切り取ってみることができるため、レントゲンに比べはっきりとわかります。
破折ファイル除去 ~broken file removal~、根管内異物除去
根管治療を行う際に必ず使用する器具が「根管治療用ファイル(右図)」です。これにはステンレススチール製とニッケルチタン製がありますが、難しい根管治療を行うとまれに先が折れてしまうことがあります。文献的には、
ファイル破折の発生率は手用0.25%、ロータリーで1.68%
手用ファイルに比べてロータリーファイルの破折は約7倍ある(Iqbal MK, Kohli MR, Kim JS. 2006)
という報告もあります。つまりファイルが折れるのは医療事故ではなく偶発症だともいえます。ファイル自体は感染源にならないため、感染がない場合はそのまま歯の中においておくことも可能ですが、問題は感染源にある場合です。この場合は ①破折ファイル除去 ②外科的除去 ③抜歯 のどれかを行わなければなりません。
当院ではゲストの皆様の身体的負担を考え、米国式根管治療による「破折ファイル除去」を第一選択としています。
症例1
症例2
パーフォレーションリペア、レッジ除去
根管の再治療が必要となる場合、必ず原因があります。中でもよく経験することが根管に穴が開いている「パーフォレーション」や根管とは違うところを治療している「レッジ」です。これらを治療することは根管内が裸眼では見えないので技術的に難しく、抜歯と判断されることも多くあります。
「米国式根管治療」では、そういった問題を可能な限り修復(リペア)し、解決することを目標にしています。
バイタルパルプセラピー
歯に耐え切れない痛みが出たとき、従来であれば(もしくは現在でも保険治療であれば)歯の神経をとるという治療が行われていました。しかし最近の研究から「虫歯になったとしても細菌は歯の神経全体には及んでいない。」(Domenico Ricucci.リクッチのエンドドントロジー.東京:クインテッセンス出版; 2017.)ということがわかってきました。
そのため歯を保存するという観点から「米国式根管治療」では感染している神経だけ取り、あとはできるだけ保存するという方法を行っています。これをバイタルパルプセラピー(断髄)といいます。MTAなどを用いるため保険治療では行えませんが、「神経をできるだけ残したい」と思われる方には非常に良い治療法だと思います。
症例1
米国式根管治療に使用する機器・器材
精度の高い診断装置:歯科用CBCT
歯科用コーンビームCTは、主にインプラント、親知らずの抜歯、矯正歯科症例で見られる埋伏歯、歯内療法などの歯科治療・診断に用いられます。三次元の高画質画像を用いることで、断層方式パノラマエックス線撮影法や口内法エックス線撮影法では判別できない、痛みや症状の原因がわかることがあります。
精度の高い治療機器:モリタトライオートZX2
トライオートZX2は今までは手用ファイルでしか不可能であった「バランスドフォーステクニック」を再現することを可能にした画期的な根管拡大装置です。米国式根管治療を行う上で欠かすことのできない装置です。
精度の高い根管拡大装置:マルテンサイトNiTiファイル、3D-XP-endoファイル
健康保険での根管治療ではステンレススチールのファイルを使用することが多いですが、自費の根管治療ではニッケルチタンのファイルを使用することが多いです。ニッケルチタンファイルの多くはオーステナイトファイル(Aフェーズ)といい超弾性が特徴でした。これには欠点もあるため、米国式根管治療ではさらにマルテンサイトファイル(Mフェーズ)を用います。このファイルは形状記憶することが特徴で、オーステナイトファイルとマルテンサイトファイルを使い分けることにより、より効果的な根管形成を行うことができると考えています。マルテンサイトファイルとして当院ではXP Endo使用し、開発者のジルベルト・デブリアン先生に直接効果的な使用法についてご教授いただきました。
殺菌性のある根管洗浄剤:QMix 2in1
QMix2in1はブリティッシュコロンビア大学のマーカス・ハパサロー先生が開発された根管洗浄剤でクロルヘキシジンを含みます。通常の根管洗浄に比較し、削りかすの除去やE.faecalisなどの難治性病変の原因となる細菌に対する殺菌効果に優れているとされています。当院では直接ハパサロー先生から効果的な使用法などについてご教授いただきました。
殺菌性のある根管充填材:バイオセラミック、MTA
根管治療で用いるセメントのうち、自費診療ではMTAやバイオセラミックを用います。MTAは1990年代にロマリンダ大学のTrabinejadらにより開発された歯科用セメントです。バイオセラミックは、歯が黒くなるというMTAの欠点を補った生体親和性に優れた歯科用セメントです。両社とも人体に対する為害性が他のセメントと比べ格段に少なく、骨を作ることができるという報告もあります。 保険治療では用いることはできませんが、優れた材料であるため当院では米国式精密根管治療(自費治療)の際は積極的に使用しています。